メュ!

メュ。

メュぼやき6

その昔、新入社員研修で各々が好きなものについて手書きでスライドを作りプレゼンテーションをするという時間が設けられた。

俺は音楽ゲームが大好きだったので、一抹の迷いもなく音楽ゲームを題材にカラフルなサインペンを駆使してスライドを作り、同期に向かって恥ずかしげもなく音楽ゲームについて熱弁したのを覚えている。なお、研修についての他の記憶は特にない。

 

それから数年経った今では終焉の地の工場の一角で道路脇に除けられた狸の轢死体のような顔をしながら日々淡々と仕事を処理しているが、ある日仕事に必要な情報を仕入れるため、念のためと引き出しの一番奥に保管していた研修資料を取り出す機会があった。

クリアファイルに雑に詰め込まれた紙束を捲り該当する資料を漁っている最中に自律神経が乱れ、身体中の汗腺から脂が噴き出して視界が暗転したのは言うまでもない。

 

 

極太の油性ペンで「音楽ゲームのススメ」とデカデカと書かれたアトミック・ボムを同僚達に見られないよう、廃棄予定の裏紙で挟みカモフラージュを入れたうえで即座に作業着の内側に隠し、中身を見返すこともないままシュレッダーの元へ走りそのままダンクシュートした。

 

 

ヴィーンヴィーンヴィーンヴィーンヴィーン………

ゴリッゴリッゴリッゴリッゴリッ……

 

 

シーーーーーン…

 

 

 

 

黒歴史が消えてスッキリした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずなのに、止まるはずの脂汗はさらに強く噴き出し始める。ただ紙をシュレッダーにかけて処分しただけなのに、人を縊り殺したような胸糞の悪さに包まれていたのだ。

 

 

 

 

その感覚は間違っていなかった。

 

 

 

 

今の俺は、ゲームセンターに一切通っていない。つまりスマホアプリ以外の音楽ゲームを一切していない。

ホームが潰れ、仕事上がりに現実的に通えるゲームセンターが周囲から姿を消した途端、ゲームセンター自体に魅力を感じなくなってしまった。あれだけ熱中していたIIDXドラムマニアからは自然とフェードアウトしており、解禁も地力維持もどうでもよくなった。

ゲーム自体に興味が失せていたのだ。

 

 

 

今「音楽ゲームのススメ」を木っ端微塵に粉砕したことは

 

 

 

音楽ゲームに興味が失せた」

「俺自身」が

 

 

 

音楽ゲームが大好きだった」

「俺自身」を、目に見える形で惨殺したに等しかった。

 

 

 

 

 

跡形もなく消えた。

抹消した。

俺が捧げた青春は、こんなにもあっけなく弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

さよなら。