スキルレスマトリョーシカ則
職場で使わされているパソコンがひどい。
バックグラウンドでクソ重いセキュリティソフトだの、全社監視システムだのをRAM4GBで動かしているせいかとにかく処理が遅く、ブラウジングしながらOfficeで作業などのごく基本的なサラリーマンムーブすら極端に制限され、酷いときには新しいフォルダを作成するのに1分かかったりする、究極ストレスマシーンである。
今日もExcelでセルを選択することもシームレスにできないことに腹を立て、足元のパソコンをカカトで軽くゴンと蹴った。課長の席からもよく
「あ゛あ゛〜遅いナァ。」
とボヤいてる声が聞こえてくるので社員一律環境は同じようで、皆がこの無能パソコンのリストラを願っている。
一方俺はというと、多方向から一斉になだれ込んでくる細々としたタスクの雨霰に打たれ、全く脳の処理が追いつかずオーバーヒートし、そのままフリーズしていた。
今カカトで攻撃したパソコン。俺という個が無能と一蹴し、仕事にならないから新品に替えてくれと常に願っているパソコン。だが、これを一段階縮尺を替えて世界を俯瞰したとき、会社という組織から見て俺という個はこのパソコンと相似であり、カカト落としをしてでも新しい人員と取り替えたいと願われているに他ならない。
以上が前回講義で触れた「スキルレスマトリョーシカ則」の実例です。本講義は全学開放の共通プログラムでありますが、無能学専攻の1年生諸君は特に参考にされたし。本日の講義は此処迄。